いまさら聞けない!電気回路設計者向け EDA基礎知識 EMI(電磁妨害)

プリント基板とEMI

EMIってよく分からない。
EMIは専門部署が対応してくれているからあまり理解していない、という回路設計者の方も多いのでは?
近年回路の高速化、高密度化、動作電圧の低減化などによりシステムになってから総合的にEMC対策をしたのでは間に合わないといった状況になり、基板単体でのEMC対策を要求されているという状況の方もいらっしゃるかもしれません。

EMC対策は「これをやればOK!」といった特効薬があるわけでなく、設計段階の初期から一つ一つ積み上げていくことが肝要です。また、基板の形状、部品配置などは全ての基板で違うので、対策のノウハウの蓄積が難しい分野とも言われています。

EMIとは?

まずは、EMIやEMCなどいろいろな言い方があるため用語の理解から始めます。

図にしてみましたが、簡単に言うとEMC=EMI+EMSということになります。EMIを放射ノイズ、EMSを輻射ノイズと呼ぶこともあり、ノイズを置き換えて不要電磁放射、不要電磁輻射と言われることも多いようです。

EMI対策=EMC対策?

EMC対策をとるには

  1. 他のシステムに電磁的障害を与えない
  2. 他のシステムから電磁的影響を受けない
  3. 自分自身に電磁的影響を与えない

という3要素を満たせば電磁的に適合しているといえます。すなわち発生ノイズと浸入ノイズの両方の対策が必要となりますが、プリント基板開発の中でEMSを考慮するのは非常に難しいことです。どんな場所にどんな不要電磁輻射が来て、そこに電磁的にアンテナになってしまうようなパターンがないか?などということは実際には検討が困難であるためです。
ただし、「不要電磁放射の少ないパターン(プリント基板)は輻射の影響も受けにくい」ということが様々な実験などから一般論として通用するとされており、プリント基板設計時のEMC対策としてはEMIつまり自分自身が外へ放射する不要電磁波を抑えることが主流となっています。

プリント基板におけるノイズの要因

プリント基板(=電子回路)のノイズ対策をする上でノイズは2種類の性質に集約されることを知ることが重要です。これは電気信号自体に二つの種類があるからで、通常この2種類をディファレンシャルモードとコモンモードと呼んでいます。ディファレンシャルモードノイズとは,ペアとなる信号線の間に乗る差動成分ノイズのことでコモンモードノイズは、ペアとなる信号線それぞれとグラウンドとの間に乗る同相成分ノイズのことです。それぞれを詳細に説明するには膨大な紙面が必要ですので別の機会に説明を譲るとして、今回はもう少し簡単にプリント基板から不要電磁が放射されるしくみを考えます。

電気信号が伝わるためには往復2本の信号線が必要です。すなわち下図のように信号源で発生した電気信号は2本の線がないと伝わりません。電気信号では一般的に電圧の形で利用されます

上図のように信号がループする回路がなければ、電流は流れることができません。回路図の上では、1 本の線であっても、プリント基板上ではグラウンド線があり、共通の戻り経路になっています。理想的には総ての信号ラインが往復の2本の信号線を持てばよいわけですが実際にはコストが増大してしまい実現は困難なので、特殊な場合を除いてグラウンドを共有する方式が使われています。このことはプリント基板が元々ノイズを発生しやすいことを示します。すなわち、共通の戻り経路である、グラウンドは、電子回路が動作する基準になる電位を与える場所と戻り経路の2つの役割を兼ねますが、プリント基板上では理想的なゼロインピ-ダンスではない(多少のインピ-ダンスを有する)グラウンドに電流が流れることとなり、この電流により電圧すなわちノイズが発生します。このノイズはループが大きいほど、また動作周波数が高いほど大きくなります。高速信号は直下のベタ層を信号線の直下を通って信号が戻り、回路を形成すると言われており正しいリターンパスが確保されていない場合ループが大きくなりノイズが増大します。
また、電源やグランドに電圧の変動をもたらす別の原因としてはLSIの電源電流があげられます。LSIの動作スピードが上がるにつれ消費する電力の変化が激しくなり、電圧の変動が増大します。これがノイズとなって伝わることになります。

不要電磁放射の抑制

不要電磁波の放射について考える時、ノイズの発生だけでは総てを説明できません。なぜならノイズというエネルギーはプリント基板内、もしくは装置の内部だけに留まっていれば動作に影響がない限り電磁的に適合していると言えるからです。つまり、エネルギーを外に出すアンテナの役目を持つものの存在が放射を大きくするわけです。 プリント基板においてこの役割を果たすのは信号線(パターン)そのものであったり、ベタ層と呼ばれる電源やグラウンドのプレーンです。

エネルギーの発生やアンテナ化を防ぐにはパターンやベタの形状や相関関係、コンデンサーの配置などで対策することが可能で、これらは計算により算出することが可能です。つまりパターン1本1本の形状などを評価して修正を加えることは論理上可能ですが、エネルギーの発生要因となる項目は多岐に渡るため実際には全部をチェックすることは不可能です。EMI対策ツールは短時間でそれらのルールをチェックすることが可能であり、高速化を続ける電子回路のプリント基板設計では必須のツールとなりつつあります。

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