只野 裕一 氏ただの ゆういち

受講者へのコメント

CAEによる固体解析において、より高精度な解析結果を得るためには適切な材料モデルの選択が不可欠です。あらゆる材料に対して万能なモデルは残念ながら存在しないため、実際の有限要素解析では多数のモデルの中から、現象に最も適したものをユーザーの責任において選択しなければなりません。材料モデルに対する正しい理解がなければ、適切な材料モデルを選ぶこともままならず、結果として「トンでもない」答えを出してしまう恐れがあります。
本講座では、特定の材料モデルについて詳説するのではなく、非線形材料モデリングの「考え方」を理解することに重点を置いた講義を行います。材料非線形性とは何なのか、そのエッセンスを身につけて頂けるような講義にしたいと考えています。
限られた時間で本質を理解して頂くためにも、初等材料力学は既習であることが望ましいです。

経歴・職歴

2002年 慶應義塾大学大学院 開放環境科学専攻 前期博士課程修了
2002年 九州大学大学院工学研究院化学工学部門 助手
2005年 博士(工学)(慶應義塾大学)
2005年 慶應義塾大学理工学部機械工学科 助手
2007年 慶應義塾大学理工学部機械工学科 助教
2008年 佐賀大学理工学部機械システム工学科 准教授
2010年 佐賀大学大学院工学系研究科機械システム工学専攻 准教授

専門分野

  • 金属材料のマルチスケールモデリングと実用解析への応用

学会(所属学会等)

講師の横顔

本コーナーは メールマガジン「CAEユニバーシティNews」向けにご寄稿いただいた内容です。
講座の時とは異なる、先生の知られざる一面をご紹介しております。

“Because it’s there.” イギリス人登山家ジョージ・マロリーの言葉です。「そこに山があるから」という日本語訳を聞けば、ご存じの方も多いのではないでしょうか。マロリーは1920年代、卓越した登山技術で世界最高峰エベレストの人類初登頂に挑み、エベレスト北東稜に散った伝説的登山家です。マロリーとは比ぶべくもありませんが、私も登山を趣味とする一人で、学生時代は休みとなればテントと食糧を担ぎ、独りで信州の山々に登るのが楽しみでした。研究室の夏休みの予定表に、一週間「やまごもり」と書いて指導教員に苦笑いされたのも、今では懐かしい思い出です。
人間は、何かを嫌いな理由は容易に挙げられるが、何かを好きな理由というのは案外言葉にできないといいます。「何故エベレストに登るのか」と問われ、”Because it’s there.”と答えたマロリー。彼が本当にこのような発言をしたのか懐疑的な意見も多いようですが、「己が成し遂げたいことへ挑むのに、それ以上の理由なんて必要なのか?」というのは、紛れもないマロリーの本心であったことでしょう。
私は金属の塑性変形を中心に材料モデリングの研究に従事していますが、学問や研究にも似たところがあるように感じます。少なくとも私にとっては、「そこにわからないことがあるから」というのが研究の最大のモチベーションです。最近は運動不足で山登りもすっかりご無沙汰していますが、学問や研究にはいつまでも”Because it’s there.”の精神で取り組んでいきたいと思います。
CAEユニバーシティでは、「FEMのための非線形材料講座」と「FEM実験室」を担当させて頂いておりますが、受講者の皆様には実務上役に立つ知識はもちろん、我々が研究者の立場で何を考え種々の問題に取り組んでいるのか、その思いや面白さも同時にお伝えできればと考えております。