CAEユニバーシティ中級教育「CAEワークショップ」受講後インタビュー 株式会社ホンダロック R&Dセンター様 〜「受講後の参加者の変化に驚きました」〜

ホンダロック様では、CAEツールを更に活用したいという目的があり、2013年上期に複数のCAEユニバーシティ講座を初級教育としてご採用いただき、2013年下期には、その流れで中級教育として「CAEワークショップ」を実施させていただきました。

今回のワークショップでは「実験とCAEのコリレーションを整理してCAEを活用しよう」というテーマの下、ホンダロック様の自社製品であるドアハンドルを題材として、実験・解析・CAE操作演習・理論説明を含めた4日間の講義を実施しました。
そのうち4日目には成果報告会として、受講者の上長も参加してこれまでの成果を報告する場も設けております。

今回受講後インタビューにご協力いただいたのは株式会社ホンダロック R&Dセンター 開発本部 製品開発部 研究BL 多田 真和 様、直井 正則 様です。
ホンダロック様ではドアハンドルやミラー、キーなどの自動車部品を製作されており、お二人とも開発の現場で構想から量産設計などに関わる傍ら、CAE関連の整備や教育、解析結果の精査、技術開発などマルチにご活躍されています。実際にストーリー作成から受講者へのフォローなど、多大なるご協力をいただいたお二人に詳しいお話を伺いました。


左から直井 正則 様、多田 真和 様

(以下 敬称略とさせていただきます。)

今回「CAEユニバーシティ」の教育を導入するに至った経緯を教えてください。

多田 これまで、CAEなどのツールの操作セミナーは色々やってきました。だから皆、操作は出来るんです。
ただ、解析結果と試験結果とのつながりが見えにくく、解析結果を判断する力が弱いと感じていました。
例えば共通のものや比較できるものがあればいいんですけど、まるっきり新規のものや前例のないもの、世の中にないものを開発するにあたって、どういうふうに解析結果を判断して評価するか、というところが不安でした。

直井 今後の製品開発部隊にとって、新しいものを作り出していくところでは重要になってくるかなっていうのがあって。そういう時代になってからじゃ遅いですよね。今からやっていかないと間に合わない。

今回CAEユニバーシティの教育以外に、CAEツールを幾つか導入されましたが、それもそのような背景からでしょうか?

多田 そうです。結局、CAEでも何でもいいけれど、何かしらツールであったり、評価できるものがあればいいのですが、数年前までは当社には少なかった。もしくは測定がしにくかったり、見えないものを測るにはどうしたらいいのか、っていうところでシミュレーションツールだったら数値化できたり、可視化できるのが強いと思いました。

CAEユニバーシティの教育に関しては、今回は、初級教育から開始しましたね。

多田 はい。座学の講座も含めて複数開催しました。その中で特に「FEM実験室」(FEM実験室-静解析編)が参加者の反応もよく、気付きが多かった。そこで、この「FEM実験室」に続く中級編として、このように実験を伴う形でホンダロック仕様にしたワークショップの開催を依頼しました。

今回「ワークショップ」という形式を希望されたポイントはどこでしょう?

多田 セミナーって基本「座学」ですよね。けれども、ホンダグループには「ワイガヤ」という文化があって、それは、役職や上下関係なく、自由に意見を言える、そんな環境の中での問題解決、製品開発をしていきましょう、というものなんです。そのグループ文化を大事にして、ホンダロック流にセミナーをアレンジしたのがワークショップという形になりました。
ワークショップという形で1つの課題に対してじっくりと問題解決していくことが、普段の業務に直接活かされるではないか、という期待がありました。また、もう1つの理由として部署間をまたいでコミュニケーションがとれる、という期待があります。

実際にはどのような部門の方が参加されたのでしょうか?

多田 今回は3ブロックからエレキ担当、試験(評価)担当、設計担当が参加しました。
今回題材として選んだのはドアのアウトハンドルです。見た目はメカ設計になりますが、最近ではご存知のとおり、中には電子ユニットが入ってきます。結局1つの製品を製作するには色々な分野の視点が入ってくるわけです。
恐らく設計者からすると強度さえきちんとしていて、ちゃんとドアがあいて閉まってくれて、という機能さえ満足していれば良くて、でもエレキ担当者から見れば、中のスイッチ関係があまりにも曲がりすぎたら壊れてしまうとか、機能を失いました、となるとまた違う目線ですよね。そして試験側としてはその両方をOKとするようなものを確かめながら、OK/NGを出しているので、それぞれ違う目線になるはずなんですよ。
そういう意味で部門間をまたいで行ったほうが、同じものをみるっていう上ではいろいろな視線が入るのでいいかな、と思いました。


直井 年齢も様々で、20代の若手から、ベテランまで参加しました。
ホンダロック流のセミナーという感じです。

開催にいたるまでにどのような点に苦労しましたか?

多田 今回自社製品を使ったというところで、何をどういう風に教えるのか、というストーリー作成の部分に苦労しました。実際の受講生の様子を見守り、彼らの反応を活用してくれたのが直井さんです。

直井 講義の時間だけで終わりというわけでなく、毎回、宿題のような形で次の講義までの間に実施すべき課題があったので、そのフォローなど、色々と工数が掛かったなとは思います。

多田 また、言葉の言い回しの部分でも気を遣いました。当社の中でオリジナルの言い方をしている言葉があって、たとえばpirt(ピート the phenomena identification and ranking table)という言葉については、当社では使わず、FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)という言い方をします。また「ハンドルのノブ」という言い方もすべて「ハンドル」にしてください、と依頼をしました。この自社特有の言い回しの問題は結構大きいですよね。


pirtの作成例

教育というとつい汎用化しがちで、言葉の問題もそうなんですよね。でも現場の方からすると、用語が1つ違うだけで、理解が進まなかったり、全く違うものとして捉えられてしまう危険性がありますよね。そういった意味で用語の問題は非常に重要だと思います。

それでは実際、受講が始まってからの様子や感想などをお聞かせください。

直井 初日は実際に当社が手がけている自動車のハンドルを使って実験を行いました。
しかし、その時は実験と解析のつながりが見えづらく、実験を「行った」というより「見た」という感じで、目的意識が少し薄くなってしまった感じがしました。後から振り返れるように写真なども撮れば良かったかもしれないですね。

今回当社としても初めて実施する形態のセミナーで色々と準備不足があったかもしれません。その節はいろいろとご迷惑をおかけしました。

直井 ただ、2日目で上期にお世話になったFEM実験室の講師の方にもオブザーバーとして入っていただき、少し雰囲気が変わってきました。先生が参加者の代表として皆に「ポイント」になるようなことを質問してくださったり、「そうそう、そこ聞きたいよね」ということを押さえてくださったのがすごく良かったです。
また、3日目のサイバネット技術スタッフの非線形に関する講義と演習も非常に好評でした。テキストも非常にわかりやすくて、今でも講座参加者が私に何か質問に来るときは、必ずそのときのテキストを持ってくるんですよ。


ワークショップの様子

直井 そして最後の4日目は今回のワークショップで実施した内容の成果報告会を行いましたが、マネージャーが全員ほめていたんです。

多田 主任クラスもきて質疑応答までしてくれた。
他の会議を断ってきてくれたマネージャーもいるんです。参加者の上長が全員揃った。これはすごいことです。それだけこの講座に期待してくれていたということだと思います。


成果報告会

ありがとうございます。特に良かったなと思われた点はどのあたりでしょうか?

直井 皆が「参加」しているという感じですね。普通はただ受けて終わりになってしまう。自分たちで考え、発表したのが良かったと思います。

多田 あれは良かったですよね。人前に出て発表して、質問を受けて。こちらからすると、「してやったり」という感じで(笑)。

直井 社内の製品カテゴリが違うと同じホンダロック内でも分からないことが多いので、それを今回、共有化できたのが良かったです。 そしてやはり実際に実験をやって、実験と解析をつきあわせたので、その考え方、とらえかた、その辺りの意識が定着できたかなと思います。

多田 シミュレーションと実験の相関関係を捉えられたこと、それからやはり成果報告会ですね。それらが上長含めて聞けたというのが非常に大きいです。現場でのコミュニケーションも取りやすくなったのではないかと思います。

受講後、受講者の反応はいかがでしょう?また現場で何か変化はありましたか?

直井 一番大きなことは受講者が皆、自信を持った、ということだと思います。

多田 ある受講者がこれまで操作セミナーは受けたことがあるのですが、「何もできません」という状態だったんです。先日、その方に対して特急での設計検証サポートの依頼が入りました。本人もCAEの操作自体忘れているということで、どうなるかと思ったけど、何とか時間内にまとめました。その後、上長から設計報告を発表するように指示があった。正直、「ダメかな」と思いましたが、成果報告会のときのようにきちんと話し始めた。その後の「なぜこうなったの?」などの質疑にも意外にちゃんと答えている。
正直、驚きました。その本人の上長も今までの評価と比べて「よくなったね」とほめていました。

直井 どうすれば関連づくかなどが色々わかってきた感じはします。みんな普通に解析の目的や背景などを語れるようになりました。教えるのもラクになりましたね。

多田 何をどうしてどうなるか、何をどう判定するかという一連の流れが普通に出来るようになってきました。勘所が良くなったというか。 確かめられるツールとして、CAEでのシミュレーションを選択できるようになりました。頭の中で理論がイメージできて、どういった寸法・形がどう効くか?がすぐイメージできるようになった、ということが大きかったですね。


直井 CAEで解析の条件設定を自分でできるようになって、出た答えで何を見たらいいか、自分で判断できるようになってきた。それで、後で本当にわかったかな?と思って聞くと、期待以上の答えが返ってくるようになった。本当の意味で実務としてやれるようになってきましたね。ひとり立ちできるようになった。
効果としてはかなり大きかったと思います。

受講後、すぐに効果が目に見えて現れているというのは、我々としても非常に嬉しく思います。受講者ご自身にも、また職場全体にとっても効果があったということですね。

では最後に次回以降への改善提案や今後のCAEユニバーシティに期待することなどをお聞かせください。

多田 一番重要なところは、ストーリーをしっかり作る、というところだと思います。

今回、ストーリーの固め方についてはどうやっていくべきか、というところが少しは分かったかなと思います。

多田 今回は構造に焦点を当てましたが、熱、流体、流動、電磁界など自動車部品1つ取っても、様々な技術領域が絡んでいるので、それぞれホンダロック流で「〜編」という形で幾つかのパターンがほしいですね。

直井 あまり難しい資料は要らないですね。難しくても受講生には響かない。
また今回のワークショップのような参加型の講座は理想的ですね。どちらか一方が教えてただ終わりじゃなくて、説明している途中でも、わからないところがあったら質問できる環境にしたい。
自分からすすんで参加したい、勉強させられているじゃなく、「自分から覚えたい」ってなるようにしたいですよね。

多田 そしてやはり会社の製品に直結するものがいいです。 ワークショップについては、他の講座同様に今後もお願いしていければと思います。

ありがとうございます。今回の開催における反省点や良かった点を踏まえて、次回さらに充実した内容をご提供させていただきたいと思います。

多田様/直井様にはお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして誠にありがとうございました。今後もCAEユニバーシティではご要望に応じた様々な講座の開催、またそれだけでなく自社内の設計環境の分析、社内の教育資産の共有化など、様々な側面から設計・CAEにまつわる教育のサポートをさせていただきだいと考えております。